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薬と健康のトピックス

vol.46 AD/HD(注意欠損/多動性障害)

目次
01.AD/HD(注意欠損/多動性障害)とは
02.随伴症状
03.随伴症状
04.大人のAD/HD
05.どのような経過をたどる?
06.治療のポイント
07.薬物療法
08.心理・社会的治療/本人へのアプローチ
09.心理的治療/家族の関わり
10.心理・社会的治療/学校の関わり

1AD/HD(注意欠損/多動性障害)とは

AD/HD(Attention Deficit/Hyperactivity Disorder)ってどんな病気?
AD/HDは次の3つの症状を中心とする発達障害です。

  1. 不注意(物事に集中する事が出来ず、忘れ物が多い)
  2. 多動性(落ち着きがなく、じっとしていることが出来ない)
  3. 衝動性(思いついた行動を唐突に行う、順番を待てない)

症状の現れ方や程度には個人差があり、大きくは次の3つに分類されます。

  1. 混合型(不注意、多動性、衝動性の3つがみられる)
  2. 不注意優勢型
  3. 多動性・衝動性優勢型

AD/HDをもつ子供の場合、実行機能の低下をはじめとする脳の器質的・機能的障害が背景にあると考えられています。
実行機能とは、目の前の状況を把握して認知する力、順序立てて考えをまとめる力、衝動的に反応して行動せずに熟考する力、現在の状況と過去の記憶を照らし合わせて判断する力、実行に移る前に順序立てる力のことです。
この実行機能が障害されているために、多動性や衝動性、不注意が引き起こされると考えられています。

不注意
AD/HDの子供は、同年代の子供にくらべて、注意力や集中力が持続しないのが第一の特徴です。特に興味のないものに対して、長く注意を向けたり集中したりするのが苦手です。また、人と話をしている最中や勉強をしているときでも、周囲でちょっとした動きや物音がすると、そちらに意識が向いてしまったりします。そのため、忘れ物やケアレスミスが多く、宿題をやりとげられないこともあります。
多動性
AD/HDの子供は、授業中でもじっと席に座っていることが苦手です。他の子供たちが皆、席についても、また先生が「席につきなさい」と指示を出しても聞かず、歩き回ったりします。多動には「移動性多動」と「非移動性多動」がありますが、上記のケースは移動性多動です。非移動性多動の場合は、席を立つことはしませんが、ひっきりなしに体を動かしたり、物をいじったりして授業に集中できません。成長するにつれて、移動性多動から非移動性多動へと移行していくのが通例です。
衝動性
AD/HDの子供は、衝動的な反応を抑える事が苦手です。そのため、何かを思いついたり気になったりすると、結果を考えずに即座に行動してしまうことがあります。例えば、質問を聞かないで話し始めたり、通りの向こう側に気になるものが見えたりしたら、安全を確認せずに飛び出したりします。また、自分の順番が来るまで静かに並んで待てないことがあるのもAD/HDの子供の特徴です。

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2随伴症状

AD/HDの子供は、不注意、多動性、衝動性の3つの代表的な症状以外にも、いくつかの附随する症状や問題を抱える事がしばしばあります。
このような症状や問題を放置したままにすると、さらに別の問題を引き起こしたり、学習面の遅れを生じたり、成長に伴って得られるはずの社会的なスキルを習得できなくなる恐れがあります。
二次性の障害があると治療経過や予後に大きな影響が出ることが分かっているので、早期治療・療養が重要になってきます。

怒りっぽくなり、反抗的態度や攻撃的行動を起こします
AD/HDの子供はときに悪意もなく衝動的に誰かを叩いたりするため反抗的と映り、周りから非難されたり、トラブルを抱える事が少なくありません。
この状態が続くと感情をコントロールできなくなって腹を立てたり、かんしゃくをたびたび起こすようになり、次第に本当の反抗心や反抗的な行動へと発展していくことがあります。
学習困難で学習に遅れがみられます
多動性や不注意があるため、通常、AD/HDの子供は知的な遅れがないにも関わらず、学習能力が阻害されていることが多いのが特徴です。
すぐに他のことに気をとられてしまうため物事に集中できず、飽きやすいため学習に身が入らないことに加えて、AD/HDの1/3ほどが学習障害を伴うことがその原因です。また、不器用な子供もよくみられます。
社会的なスキルを身に着けるのが苦手です
AD/HDの子供は、集団行動で学ぶべきコミュニケーション能力などの社会的なスキルを年齢相応に習得するのが苦手です。
そのため、周囲から理解されにくく、友達とトラブルになったり、集団から浮いてしまったりすることがあります。
常に劣等感を感じているため、自尊心や自己評価が低くなります
学習に遅れが生じていることや、学校や家庭でたびたび叱られていること、トラブルばかり起こして友達から嫌われていると思うことなどから、AD/HDの子供は劣等感を抱いていることがほとんどです。
本人もなんとか状況を変えようと努力しますがなかなかうまくいかず、そのために自尊心がひどく傷つき、自己評価が著しく低いことが珍しくありません。
情緒面でかなり不安定になります
AD/HDの子供は周囲からからかわれたり、親や教師から叱られることが多いため、ひどく孤立感を抱く場合が少なくありません。
そのことが引き金となって、極度に親離れが苦手になったり、学校生活に強い不安を感じたり、あるいは抑うつ的(気分が沈む)になるなど、情緒面でかなり不安定になることがよくみられます。

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3成長段階でみた特徴

乳児期(~1歳)
よく泣き、なだめることがとても難しく、歩き出す頃には過剰な運動がみられます。
また、フラフラになるほど眠りたくても眠ろうとしなかったり、食事を時間に合わせて規則正しく食べるリズムがなかなか確立しないこともあります。
幼児期(1~6歳)
落ち着きがなく、じっとしていられません。言う事が聞けず、破壊的な遊びを好むこともあります。
我慢が出来ないために、とくにかんしゃくを起こすこともあります。また、言葉の軽い遅れがあったり、排泄の自立が遅れるといったこともみられます。
児童期(7~12歳頃)
じっと着席していることが出来ず、座っていても常に体のどこかを動かしています。
注意が散漫で、興味の対象がめまぐるしく変わります。忘れ物や紛失が多いのもよくみられます。
おしゃべりで他人の邪魔をしたり、出し抜けに答えてしまったりする一方で、他人から話しかけられても上の空に見える事がたびたびあります。
行動が突発的で、怒りをあらわにしやすく、友達と仲良くすることが苦手です。また、不器用だったり、勉強の遅れも目立つ場合があります。
思春期(13~18歳頃)
多動性は減少しますが、集中が困難であったり不注意が持続します。
ルールに従うことができず、両親、教師、友人と衝突することが多くなる場合があり、とくに反社会的な行動をとることもあります。
学習意欲が低く学業の不振が顕著になり、自尊心が低くなることもまれではありません。
その結果、やる気がなくなり、なげやりな態度になります。また学校生活への意欲を失い、自分の世界へひきこもりがちになっていく子供もいます。

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4大人のAD/HD

大人になっても、AD/HDの症状は基本的には子供の場合と同じです。
ただし、多動性については成長するにつれて改善される場合が多いことから、大人のAD/HDは「不注意」と「衝動性」が主となります。

不注意な行動が多い
AD/HDの人は、大人になっても、注意を払ったり集中できるのは短時間に限られます。
また、人と話している時や会議中などに、しばしばぼんやりしてしまうこともあります。
大切な約束を忘れてしまうなどの物忘れは「無責任」と思われ、段取りの悪さや整理が苦手な部分は「だらしがない」と受け取られることも多く、本人のやる気とは裏腹に、周囲の社会的評価は低くなりがちです。
仕事上はもとより、人間関係や日常生活にもさまざまな支障が出てきやすいとされています。
子供の頃は多少大目にみてもらえた不注意も、責任が重くなる社会人としてはマイナスポイントとなります。
衝動を大人になってもコントロールできないことも
さまざまな刺激に対して考える前に反応する傾向も、成人後まで持ち越される場合があります。
子供の衝動的行動に加えて、大人の場合は、車を運転中に無理な追い越しを繰り返すなど重大なリスクを伴う場合や、アルコール中毒などの薬物中毒に陥る危険性が高い点も注意が必要です。

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5どのような経過をたどる?

かつては、AD/HDは成長するにしたがって改善すると考えられていましたが、その後の研究から、多くは慢性的な経過をたどることが明らかになってきました。
長期的な経過は3つのタイプに分かれると考えられています。

1つは青年期までに症状が消失するタイプ、2つ目は青年期まで症状が続くタイプ、3つ目は症状の持続に加えて、気分障害やアルコール・薬物依存といった障害を合併するタイプです。

予後を左右する要因
良好な予後が期待できる要因としては下記が挙げられます。
  1. 他の障害や疾患を合併していないこと
  2. 良好な知的能力があること
  3. 学習障害の程度が軽度であること
  4. 著しい劣等感がなく、自尊心がひどく低下していないこと
  5. 感情が不安定でないこと
  6. 過去に何かを達成したことがあること
  7. 周囲の理解があり、サポートが得られること
逆に予後が悪くなるのは上記のいくつかが欠けている場合です。

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6治療のポイント

AD/HDの治療には大きく分けて、「薬物治療」と「心理・社会的治療」の2種類があります。治療に取り組んでもすぐに治るという病気ではありませんので、治療は完全に治すということよりも、病気をもっていても普通の子供と同じように日常生活、社会生活を送ることが出来るようになることを目標とすることが大切です。

あきらめずに根気よくケアに取り組めば、症状をコントロールでき、他の子供たちと同じように日常生活、社会生活が送れるようになります。
その積み重ねで、本人の成長とともに病気が治る可能性があると理解する事が大切です。

AD/HDの治療においては、いかに有効な治療プログラムを組むかが重要なカギとなってきますが、子供と家族、医師、臨床心理士、ソーシャルワーカー、担任教師や養護教諭などの学校関係者、福祉行政担当者等、治療に携わるさまざまな人たちが連携して取り組む必要があります。

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7薬物療法

AD/HDでは、脳内の神経伝達物質であるドパミンやノルアドレナリンの作用が不足気味であると言われています。
そのため、薬は不足している神経伝達物質を増やす働きのある薬が用いられます(コンサータ、ストラテラ)。

これらの薬は放出されたドパミンやノルアドレナリンが再び取り込まれるのを抑制し、受容体に結合しやすくします。
神経伝達物質の働きを活性化することにより、情報伝達がスムーズとなり、AD/HDの症状が改善されると考えられています。

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8心理・社会的治療/本人へのアプローチ

問題行動を修正する行動療法

行動療法は、AD/HDの子供に社会的な善悪を理解させ、行動を正しい方向に導いていく一般的な治療法です。
本人が不適当な言動をしたときには、その都度どうすればよいのかを指摘し、正しい行いをした時や物事を成し遂げた時には、精一杯褒めて評価するといった形で、行動の修正を図っていきます。

行動の修正をより強化するため、子供が望ましい行動をとった場合に、それを評価してポイントを与え、ポイントが基準に達したら具体的なごほうびをもらうといったトークンエコノミーという方法がよく用いられます。
なお、望ましくない行動の場合にはポイントを減らすという方法を組み込むこともありますが、いずれにしても罰が目的ではなく、望ましい行動への称賛が分かりやすく伝わる方法でなければなりません。

行動療法には、本人の自信と意欲をもたせていく認知面の効果も期待できますから、実行機能の弱いAD/HDの子供にはとても有効です。

行動療法は一般には医師と計画を立てて親や教師が実行するという形をとります。気をつけなくてはならないことは、褒める行動の目標を、少し努力すれば到達できるものにしなくてはいけないということです。
行動療法を成功させるためには、少しずつ目標を上げていくように、大人が辛抱強く子供の成長を見守るという姿勢が大切です。

社会性を養うソーシャルスキル・トレーニング(SST)

AD/HDの子供たちの多くは友達ができにくいため、年齢相応のソーシャルスキルを持っていません。
ソーシャルスキル・トレーニング(SST)では、感情と行動をコントロールする術を身につけ、友達との円滑な相互関係を保てるような基本的な社会的スキルを学びながら、日常生活の中でそれらのソーシャルスキルをうまく使えるように訓練していきます。
行動療法が主に個人療法であるのに対し、SSTは集団療法として行うことで効果を得やすい治療法です。

SSTは、遊びやゲームを通して行います。ゲームに含まれる認知・学習課題を通して、注意と記憶を喚起しながら集団に上手に参加するスキルを養います。

医療機関や教育機関のほか、家族会、NPOや発達障害者支援センター主催のものなど、SSTを受けられる場は少しずつ増えてきています。

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9心理的治療/家族の関わり

AD/HDの治療において、養育者である親の関わり方は重要です。通常、AD/HDの子供を抱える親は、子供の問題行動に手を焼いているうえに、周囲の無理解からくる非難もあって孤立して苦しんでいます。そのことが子供への対応に好ましくない影響を及ぼし、悪循環に陥ることがよくみられます。AD/HDの心理的治療では、子供だけをその対象とするのではなく、親がAD/HDを正しく理解し、その対処法を学んでいると治療効果が持続しやすいことが分かっています。そのために、AD/HDについての正しい知識や適切な対処方法を教示される心理教育が有意義です。また、より一層、深くAD/HDの子供との関わり方を知ることのできる方法として、最近では、ペアレント・トレーニングを行う場も少しずつ増加しています。

これらの心理教育やペアレント・トレーニングは集団療法として行われるのが普通で、そこでは単に「教えられる」だけでなく、「同じ思いを共有できる他の親と出会って話し合える」という意義もあります。

親がAD/HDを理解し、対処を学ぶためのペアレント・トレーニング
ペアレント・トレーニングは、親がAD/HDを理解し、AD/HDの子供の行動を行動療法的にコントロールする技法を獲得できるよう、親自体が集団で取り組む方法です。
AD/HDの子供をもつ親が孤立せずに、子供と向き合い方を変えることで症状への対処の仕方を高め、同時に親が抱える自責的な感情を和らげるといった効果があります。
一般的なペアレント・トレーニングは、10回程度のセッションを1クールとして行われます。
AD/HDについての病気の理解と、行動療法に基づいた子供への対処の仕方を、ときにロールプレイングをはさみながら実践的に学び、実際に家庭で応用した結果をフィードバックさせながら、子供にあった対処技法を身に付けていきます。

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10心理・社会的治療/学校の関わり

多くの時間を過ごす教育現場での治療教育的対応は治療上、最も重要なものの1つです。
理想的には、ペアレント・トレーニングで習得するAD/HDの子供への対処技法を、担任教師も身に付けて指導にあたることが求められますが、そのような対応がとれる教師は限られているのが現状です。
しかし、AD/HDの子供と接する時間が圧倒的に多い学校関係者へのアプローチは避けて通れません。

教育の現場と家庭とが一貫して子供と向き合っていくために、親、教師、医師などの関係者全員で治療の重要性を理解し、お互いに情報交換を行って適切な対応がとれるような連携・支援体制を築いていく事が欠かせません。

AD/HDの子供に配慮した学習指導や環境調整

多動や集中力の欠如のため、学力の遅れや集団参加でのトラブルを抱えるのが通常の為、教師はAD/HDの子供に対する特別な配慮を行い、なるべく混乱しないように細かく分けて学習指導したり、学習に遅れがみられる場合には個人指導を行う必要があります。
また、混乱を引き起こしたり、注意が散漫になるような刺激からAD/HDの子供を遠ざけるような教室の配置にして、常に教師のそばに座らせて行動を観察したり、教示しやすくするといった環境調整を行うことも大切です。
しかも管理しようとし過ぎると反抗的になりやすいという傾向もありますので、そのことを心得たしなやかな取り組みが大切です。

学校での行動面や学業面での変化の情報は次の治療ステップの重要な判断材料になりますから、学校組織や教師との密接な連携がとても重要になってきます。

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